杉村惇作品 常設展について
塩竈市杉村惇美術館では、「静物学者」と敬愛された、洋画家杉村惇氏の世界に
直に触れることができます。杉村氏は、塩竈ゆかりの作家です。
戦後塩竈に居を構え、市場に水揚げされた鮮魚や風情のある港町の風景に魅せられ、
数多くの作品を残しています。
静物画を始め、第一回の東北美術展(河北美術展)で河北賞を受賞した
「婦人像」などもご覧いただけます。
静謐で重厚な杉村氏の世界の魅力をご堪能ください。
より作品をお楽しみいただくために、当館学芸員がギャラリートークを実施しております。
ギャラリートークご希望の方は、事前に当館までご連絡ください。
一般 | 200円(160円) |
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高校生 | 100円(80円) |
中学生以下 | 無料 |
- ※カッコ内は20名以上の団体料金
- ※特別展の観覧料は展覧会ごとに異なります。
- ※メンバーシップ会員カードのご提示で常設展・特別展が無料になります。
- ※各種障がい者手帳を提示された方は常設展が免除されます。また、身体・精神2級以上と療育手帳の介護者1名も常設展示が免除されます。特別展の免除は展覧会ごとに異なります。
開館時間 | 午前10時~午後5時(入館受付は午後4時30分まで) |
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休館日 | 月曜日(祝日・振替休日の場合はその翌日。但しGW等の長期連休の場合は除く) 年末年始 |
住所 | 〒985-0052 宮城県塩竈市本町8番1号【MAP】 |
TEL | 022-362-2555 |
FAX | 022-794-8873 |
洋画家 杉村惇について
1907 – 2001
明治40年(1907)、東京市牛込区(現新宿区)に5男4女の末子として生まれました。戦後の昭和21~39年頃に塩竈で暮らし、塩竈の風景や鮮魚を題材に、数多くの油彩画を描きました。なかでも静物画を得意とし、「静物学者」の名で親しまれました。
「東京時代」
昭和2年(1927)、東京美術学校(現東京藝術大学)西洋画科に入学。岡田三郎助(帝国美術院会員・第1回文化勲章受章)に学びました。在学中の昭和5年(1930)、静物画≪パン≫で第11回帝展(帝国美術院展覧会)に初入選するなど、その才能は早くから高く評価されました。
両親が山形県鶴岡市の出身であり、もともと東北にゆかりがありましたが、仙台に長姉が嫁いだことから、宮城県との縁が生まれました。
昭和8年(1933)、≪婦人像≫が第1回東北美術展(現河北美術展)で最高賞の河北賞を受賞、翌年の第2回展では≪ミシン≫が同じく河北賞を受賞しています。
「塩竈時代」
昭和20年(1945)、戦災により自宅・アトリエ、作品のほとんどを失い、東京から仙台に疎開。翌年、夫人の縁故により塩竈に転居します。当初は築港魚市場の向かいに居を構えていたこともあり、活気ある港町・塩竈は杉村画伯に多くの影響をもたらしました。
「そのころ、群馬県の疎開先から東京に戻っていた中野和高先生から「早く東京に戻ってきなさい。地方でぐずぐずしていると、画壇から取り残されてしまう」という、上京を促す手紙が度々届きました。私は、「それなら逆に地方に腰を据えてしっかり勉強してやろう」と決心したんです。」「東京の騒々しさに巻き込まれて右往左往するよりも、こうして落ち着いて勉強できたことは、自分にとってはるかにプラスになったと思っています。」「モチーフの幅もぐんと広がりましたね。東京ではちょっとお目にかかれない新鮮な魚介類は格好の題材となりました。」(『黒への収束』河北新報社 1994年)
杉村画伯自ら、塩竈についてこのように語っています。自分の固有の色調は「黒」だと意識したのも塩竈時代のことで、作品とその制作に大きな影響をもたらしたことがわかります。自身の制作活動を続けながら、昭和22年(1947)の第1回塩竈市美術展の審査員や公民館の文化講座の講師を務め、塩竈の文化の振興に大きな力を尽くし、昭和36年(1961)には塩竈市文化功労者表彰を受けました。
「昭和後期 -晩年」
昭和40年(1965)、東北大学や宮城教育大学で教鞭をとる利便性などから、塩竈から仙台へ転居します。
昭和45年(1970)には日展審査員、その後は評議員も務めたほか、様々な美術団体の運営に参加、結成に尽力するなど芸術文化の振興に大きく貢献しました。物の〈存在と空間〉を追求し続け、時代は平成を迎え80歳を越えてもなお、その情熱を絶やすことはありませんでした。
こうした杉村画伯の画家人生には、いつも夫人の支えがありました。杉村画伯の作品群は、「今度のは、良いわね」といった、夫人のさりげない言葉を受けて展覧会に出陳されたと言います。平成12年(2000)、夫人が急逝、「後で手をいれるもの」と夫人が書き置いた作品群に1年かけて取り組みました。
平成13年(2001)、93歳で亡くなるその年まで精力的に作品と向き合い、一貫したテーマを追求し続けた杉村惇。その生涯は、重厚で力強く、時に優しい画風が物語り、今日も作品に生き続けています。
杉村惇 略歴
- 1907年(明治40)9月7日
- 東京市牛込区(現新宿区)若松町に、父杉村正謙、母喜代井の5男4女の末子として生まれる。父は戸山脳病院を経営 両親ともに山形県鶴岡出身
- 1920年(大正9) 13歳
- 高千穂中学校に入学 はじめて油絵を描き始める
- 1925年(大正14) 18歳
- 中学校卒業 本郷絵画研究所に入所
- 1927年(昭和2) 20歳
- 東京美術学校(現東京芸術大学)西洋画科入学 三年より岡田三郎助教室
- 1930年(昭和5) 23歳
- 在学中≪パンと帽子≫で第十一回帝展初入選
- 1932年(昭和7) 25歳
- 東京美術学校卒業 卒業制作≪花と婦人≫など3点入選で、光風会展F氏奨励賞
- 1933年(昭和8) 26歳
- 光風会会友に推挙 以後無鑑査 寺内萬治郎に師事
第1回東北美術展(現河北美術展)≪婦人像≫他入選・河北賞。
仙台市の長姉の嫁ぎ先に寄寓。常盤木学園で一時教鞭を執る。
- 1934年(昭和9) 27歳
- 第2回東北美術展≪ミシン≫他入選・河北賞
- 1938年(昭和13) 31歳
- 5月 新野さく子と結婚 仙台市木町末無町に転居(’40年)
- 1940年(昭和15) 33歳
- 上京 豊島区千早町の借家(アトリエ付きの一間)に転居 軍需生産美術推進隊に参加
- 1941年(昭和16) 34歳
- 仙台三越にて個展
- 1943年(昭和18) 36歳
- 文展無鑑査
- 1945年(昭和20) 38歳
- 東京にて戦災 全作品と集めていたランプ等焼失 5月に仙台市へ疎開 長男・豊(当館名誉館長・染色家)誕生
- 1946年(昭和21) 39歳
- 塩竈市(港町、旭町)に’65年まで居住 塩竈の風景や新鮮な魚を描く 日展委員
- 1947年(昭和22) 40歳
- 塩竈の第一回文化講座(洋画)の講師 第1回塩竈市美術展審査員
- 1949年(昭和24) 42歳
- ≪海近き部屋≫で日展岡田賞
- 1950年(昭和25) 43歳
- 河北美術展委員 この頃、塩竈の帆手祭やみなと祭のポスターを描く
≪春近き河岸≫で光風会展・特賞
- 1951年(昭和26) 44歳
- 東北大学教育学部講師 翌年助教授
- 1953年(昭和28) 46歳
- ≪石膏像≫などで光風会で会員最高賞の光風相互賞
- 1961年(昭和36) 54歳
- ≪パンのある卓≫で日展菊華賞 河北美術展顧問
- 1963年(昭和38) 56歳
- 日展審査員(’70 ’77年)
- 1964年(昭和39) 57歳
- 宮城県民会館正面外壁タイルレリーフ制作
東北大学教育学部教授 日展会員
宮城県芸術協会の結成に尽力、後に理事
- 1965年(昭和40) 58歳
- 仙台光風会結成 塩竈市より仙台市(現八幡六丁目)に転居
- 1967年(昭和42) 60歳
- 宮城教育大学教授(~’72年)
- 1978年(昭和45) 72歳
- 日展評議員
- 1983年(昭和58) 76歳
- ≪古き雛≫で日展文部大臣賞 第1回「みやぎの5人」展に出陳(宮城県美術館)
- 1984年(昭和59) 77歳
- 日展参与 河北文化賞 宮城教育大学名誉教授
- 1986年(昭和61) 79歳
- 「8・5豪雨」で自宅が被災 翌年仙台市青葉区(旧宮城町)国見ヶ丘転居
- 1988年(昭和63) 81歳
- 回顧展(宮城県美術館)、画集刊行 個展(鶴岡致道博物館)
- 1991年(平成 3) 84歳
- 河北美術展審査員
- 1994年(平成 6) 87歳
- 「黒への収束 聞き書き」(「河北新報」に連載)
画集『黒への収束』(河北新報社)刊行
- 1996年(平成8) 89歳
- 仙台市名誉市民 日洋会名誉会員 河北美術展名誉顧問
- 1999年(平成11) 92歳
- 特集杉村惇展(宮城県美術館)
仙台文学館に≪コーヒー挽きを囲む≫を展示
- 2001年(平成13) 93歳
- 仙台市名誉市民杉村惇展Ⅰ(せんだいメディアテーク)
8月13日肺炎のため永眠(満93歳11ヵ月)
11月 塩竈と杉村惇作品展 〜市制施行60周年記念〜(塩竈一ノ蔵酒造ギャラリー)
杉村家より油彩などが塩竈市に寄贈
- 2002年(平成14)
- 仙台市名誉市民杉村惇展Ⅱ(せんだいメディアテーク)
塩竈市受贈作品展「杉村惇の世界」(ふれあいエスプ塩竈)
- 2003年(平成15)
- 杉村惇作品展―存在と空間の伝説―(塩竈・旧亀井邸)
- 2004年(平成16)
- 仙台市名誉市民杉村惇作品展ー存在と空間の伝説ー(仙台市市役所1階ギャラリーホール)※以降毎年シリーズ化
杉村惇とデッサン展 〜ふれあいエスプ開館5周年記念〜(ふれあいエスプ塩竈)
- 2007年(平成19)
- 杉村惇・生誕百年記念展(ふれあいエスプ塩竈)
- 2008年(平成20)
- アトリエ再現 ー創造の原点ー(塩竈・旧亀井邸)
- 2010年(平成22)
- 杉村惇絵画展(ふれあいエスプ塩竈)
- 2011年(平成23)
- 没後10年杉村惇展−修練の軌跡−スケッチを中心に(カメイ美術館)
- 2014年(平成26)
- 塩竈市杉村惇美術館開館
塩竈市文化選奨、塩竈市文化功労者、地域文化功労文部大臣表彰、宮城県文化功労者、
仙台市政功労者、仙台市特別市政功労、仙台市名誉市民、紺綬褒章