あなたと海のあいま、通り過ぎてゆくすべて

投稿日:2017.09.20


宮城県にゆかりのある三名の作家、写真家の遠藤祐輔、美術家/吟遊詩人の清野仁美、画家の門眞妙による自主企画展を開催します。

遠藤祐輔は、動くことを止めない人や街を、彼自身もまた動き続けながら撮影します。その量を伴った速度によって圧縮された都市空間が写し出され、WEBを次々とスクロールしているかのような感覚を生じさせることに、彼の写真の特質があります。遠藤は撮影対象の「観察者」や「目撃者」として振る舞うので はなく、むしろ撮影対象に限りなく同化しようと研ぎすましてゆく作家です。

清野仁美は、身体を介した表現を主軸に、身近な「場所」で起こる極私的な物語を取りこぼさぬよう語り伝える活動を続けてきました。自らの身体を「メディア」として用い、鑑賞者と作品(清野の見せたい光景)の境界に立つことによって紡がれる彼女の物語に耳を澄ませることは、即時性が要求される現代において、届くまでに長い時間を要する「手紙」を受け取るような体験となるでしょう。

門眞妙は、少女のキャラクターをモチーフとした絵画を発表しています。描かれた少女たちは象徴的な一言(作品タイトル)を発し、あとは黙して見る者を見つめ返します。鑑賞者は彼女たちが辿ってきたストーリーや抱いている感情を補完しようと、その表情や言葉、背後に描かれた風景の意味を一心に探り出すことでしょう。人や場所との遭遇が持つ本来の豊かさや複雑さを、少女たちが思い出させてくれるのです。

それぞれの方法を通して「場」が大きく関わる作品を制作している三名の作家の作品を紹介します。


The void between you and the ocean, and everything that passes by

3 artists with ties to Miyagi prefecture, photographer Yusuke Endo, artist/storyteller Hitomi Seino and painter Tae Monma, will hold a self-organized exhibition.

Yusuke Endo photographs the never-stopping people and the city while he himself keeps moving. That speed, accompanied by the amount, illustrates the condensed urban space and generates a feeling as if you are scrolling through the Web. That is his photos’ characteristics. Endo is not an artist who behaves as the “observer” or the “witness” of his subjects, but rather sharpens himself in an attempt to assimilate as much as possible.

Hitomi Seino, with expressions via bodies at the center, has been acting to convey each and every very personal story that happens in familiar places. Listening to her stories weaved by using her own body as “media” and by standing on the border of the viewer and the creation (the scene which she wants to show), will be an experience like receiving a “letter,” which takes a long time to arrive, in this modern age of immediacy.

Tae Monma has published paintings with girl characters as motif. The portrayed girls let loose one symbolic word (the title), and then silently look back at the viewer. The viewers will try to supplement the girls’ stories and their feelings by intently finding out the meaning of the landscape portrayed in the background. The girls will remind you of the original richness and complexity of encountering people and places.

We will introduce the works of 3 artists who create art which involves “places” in each of their own ways.


中心市街地から電車で30分。駅から出て、港を背にしてぽつぽつと点在する店を通過してゆく。パン屋。八百屋。和菓子屋。眼鏡屋。寿司屋。お茶屋。酒造屋。駄菓子屋。(この先で硝子のティーカップを買ったお店はなくなってしまった。)小さな神社の角を曲がる。ゆるやかな坂と階段を上りきると、白い壁が印象的な美しい建物が現れた。振り返ると見晴らしが良い。この旧い港町は坂や丘が多いことが分かる。扉を開ける。カフェがあり、音楽が外に漏れ出ている。使い込まれた木製の階段を上りギャラリーに足を踏み入れると、展示替えの最中らしくそこには何もなかった。代わりに、大きな窓から覗く風に揺れる竹林の青が、真っ白な空間に反響していた。何個もの窓のある空間は、外部からの介入を許してくれているかのようで、ここから遠くない場所にある海とも繋がっているのだと思わされる。

作品に海を見せてあげたい。

その場所を初めて訪れた時、そのような感情が去来した。

30 minutes by train from city center. Get out from the station and pass by stores scattered about with the port behind me. Bakery. Greengrocery. Japanese confectionery store. Glasses store. Sushi restaurant. Tea shop. Sake brewery. Mom-and-pop candy store. (The store that I bought a glass tea-cup is gone.) Turn a corner at a small shrine. After finishing climbing a gentle slope, an elegant building with an impressive white wall emerges. When I turn around, the view is superb. There are many hills and slopes in this old port town. I open a door. There is a café, and the music can be heard from outside. When I climb up a well-used wooden stairs and walk into the gallery, there was nothing there, as they were in the middle of changing exhibits. Instead, a bamboo-forest swaying in the breeze can be seen from the large window, and the green is echoing in the white space.
A space with multiply windows seem like they are permitting intervention from the outside, and makes me feel like it is connected to the ocean not far from here as well.
I want to let the art see the ocean.
When I went to the place for the first time, that feeling came and went.


遠藤祐輔 /ENDO Yusuke(写真家)
1985 宮城県仙台市生まれ
2003 宮城県仙台第一高等学校卒業
2007 東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業
人間のユニークな身体性と躍動する風景を撮影する写真家として活動。立ち止まっては見れない光景を追い求め続けている。今回は相反するようなロマンチシズムとの融合を試みている。
[主なグループ展]
2016「第15回写真1_WALL展」(ガーディアン・ガーデン/東京)
2011「floating view “郊外からうまれるアート”」(トーキョーワンダーサイト/東京)
2011「floating view 2 トポフィリア・アップデート」(新宿眼科画廊/東京)
[受賞]
「第14回写真 1_WALL」審査員奨励賞高橋朗選
[blog作品]
2010「finalfilm」


清野仁美/SEINO Hitomi (美術家/吟遊詩人)
1985 新潟市生まれ、宮城県女川町、仙台市、蔵王町、名取市など各地で暮らす。
2004 国立宮城工業高等専門学校情報デザイン学科3年次修了
2010 東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業
2012 ドイツバウハウス大学ワイマール校 交換留学
2014 東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了
日常の中でもとりわけ、働き方と生き方とを、時代と関連付けて肯定することができたらいい。眼前の変化に断絶や喪失を見るのでなく、円環するように受け継がれていくものに気づけるように生活/制作し ている。2016年からは‘最後の姿’の意で「絶景」にまつわる作品制作を始める。
[個展]
2014 「ショウケース vol.10 清野仁美」(ARCUS Studio/茨城)
[主なグループ展]
2016 「ある鳥」(Gamkot gallery/大邱市、韓国)
   「静かな夜明け前3時」(KBS ギャラリー/大田市、韓国)
2015 「せんだい 21 アンデパンダン展」(西公園/宮城)
2014 「東京藝術大学美術学部卒業・修了制作展」(東京藝術大学上野校地/東京)
2013 「WIP展」(東京藝術大学取手校地/茨城)
2012 「ADUE MARY」(取壊し前のアパート “MARY” /Weimar、ドイツ)
「summaery」(Bauhaus-Universitat Weimar/Weimar、ドイツ)
2011 「floating view “郊外”からうまれるアート」(トーキョーワンダーサイト本郷/東京)
2010 「上勝 Earthwork 2010」(上勝町生実地区/徳島)
「東京藝術大学美術学部先端藝術表現科卒業・修了制作展」(BankART1929/神奈川)
2009 「No Man’ s Land」(在日フランス大使館/東京)
[メディア]
2011 「翼の王国」5 月号 ANA MEETS ARTS 036


門眞 妙/MONMA Tae (画家)
1985 宮城県仙台市生まれ
2004 宮城県立宮城野高等学校美術科卒業
2009 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
アニメ的な少女のキャラクターと精緻な背景描写の絵画表現を中心に活動。言葉にできない『感情』『時間』『一瞬』の集積と、この世界との和解を描く。キャラクターの姿をした『人』としての少女のアップデートを続ける。
[個展]
2016 「かみさまのかたち」(新宿眼科画廊/東京)
2013 「美しい ending」(新宿眼科画廊/東京)
2010 「ドラマ」(新宿眼科画廊/東京)
2009 「だけど、忘れられる」(新宿眼科画廊/東京)
[主なグループ展やアートプロジェクト]
2015 「わたしが彼女を見た瞬間、彼女はわたしを見た」(新宿眼科画廊/東京)
2013 「トランスエフュージョン02+ドローイング展」(新宿眼科画廊/東京)
2012 「世界中の誰よりもきっとアイドル」(新宿眼科画廊/東京)
   「トランスエフュージョン」(新宿眼科画廊/東京)
2011 「floating view 2 トポフィリア・アップデート」(新宿眼科画廊/東京)2010 「Mr.のChildren2」 (青井画廊/大阪)
「Mr.のChildren」 (HidariZingaro/東京)
「カオス*ラウンジvol.2」 (moarag garage/東京)
2007〜2009 ワタラセアートプロジェクト(群馬・栃木各所)
[アートフェア]
2015 「young art taipei」(Sheraton Grande Taipei Hotel/台北)
2014 「3331 ART FAIR – Various Collectors’ Prizes -」(3331 Arts Chiyoda/東京)
2011 「エマージング・ディレクターズ・アートフェア ULTRA004」(スパイラルホール/東京)


<パフォーマンス:清野仁美によるパフォーマンス(全3回)の日程と鑑賞方法>
内容は各回で異なります。

①9/24(日)10:00 錦町公園集合(仙台市)10:30 終了予定

錦町公園(仙台駅から徒歩15分程度)
②9/30(土)15:30 JR東塩釜駅集合(塩竈市)16:00 終了予定

③10/1(日)13:50 宇内浜集合(塩竈市/野々島)14:10 終了予定
宇内浜(野々島の船着き場から徒歩11分)


※塩釜発13:00までの塩釜市営汽船に乗船ください。(塩釜⇆野々島 往復1,100円)
※塩釜発11:00の汽船は9月いっぱいで休航です。塩釜発13:00の便の前は9:30の便になります。ご注意ください。
※パフォーマンス終了直後の野々島発塩釜行の汽船は14:23です。

乗船方法や運行時刻、料金等は浦戸諸島のサイトからご覧いただけます。

島の地図は浦戸諸島のサイトからPDFをダウンロードいただくほか、塩釜駅から徒歩10分の塩竈市営汽船のりば(マリンゲート塩釜)構内にも設置されております。


クロージングパーティ/10月1日(日)16:00~17:00
入場料/無料
チラシデザイン/相島大地 
企画/門眞妙
翻訳Penguin Translation /藤井ジョシュア正博・加藤久美子


ホームページ

開催期間
2017年9月21日〜10月1日(月曜休館)
時間
10:00〜17:00
協力
新宿眼科画廊
問い合わせ先
anatatouminoaima@gmail.com