【インタビュー】ダンサー・磯島未来さんと「からだを動かすワークショップ」

投稿日:2017.02.05

レポート


美術館ボランティアJUNBIサポーターとして活動している澤里友紀さんによるインタビュー記事です。澤里友紀さんの小学1年生になるお子さんも「からだを動かすワークショップ」に参加しています。 磯島さんのお話を聞いてみたい!ということで、実際にワークショップも体験していただき、取材をお願いしました。





杉村惇美術館の大講堂の贅沢な空間の中を、はだしで元気に走り回る子どもたち。
ファシリテーターの未来さんが一声かけ、中心で体をほぐしだすと、
ひとりふたりと集い始め、いつの間にか自然と笑顔あふれる輪ができあがります。
「おやすみ中は何してた?」
「最近ハマっていることはなに?」
そんな雑談を挟みながら、子どもたちの心と体はスルスルとほどけるように
動いていき、そのうち
「この動きおもしろい!」
「なんだか今、天井を抜けて、空へ飛んで行くようだった!」
と子どもらしい発想を爆発させ、大人では辿り着けない世界へ飛び立っていきます。
そんな子どもたち各々の“らしさ”を汲み取り、体で表現する楽しさを教えてくれた
「塩釜らしく 21世紀らしく わたしたちらしく」。
ファシリテーターの磯島未来さんにお話を伺いました。



●ダンスワークショップといえば、アップテンポで明るい音楽の中「Let’s Dance☆」
なイメージでしたが、未来さんのワークショップ(※以下、ワーク)では音楽は
最小限な役割だったように思います。


対象が子どもや大人に関わらず、自分が普段使っている曲、好きな曲、こういう曲の
中で動く体が見たいという曲を選んでいます。
作品自体も“わー!!”というものではないので。



●このワークを見ていると“みんなと動きを合わせる”というよりは“自分の体と
向き合う、自分の体の動きを開発していく”という感じがしますね。


“みんな一緒”よりは“みんなバラバラ”がいいと思っていて。
違う人・もの・考え・体験などいろんなものを含めて、こういう人もいるんだ!
という違いを感じ、それを楽しんでほしいと思っています。



●未来さんが子どもたち1人1人に細やかに声を掛けていたのが印象的でした。
意識してされているんですか?


人を見て作品を作るタイプなので、意見のやり取りやワークを重ねることは大事だと
思っています。ただ、子どものワークに関しては、大体の大きな矢印はあるけれど、
細かい段取りは子どもを押し込めてしまうので決めません。
子どもが出すアイディアを受け止める余裕を持ちたいので。子ども向けのワークを
やり始めた頃は自分で方向性を決めてしまっていましたが、そうすると誰が参加
しても同じダンスに持っていきがちになってしまうんですよね
今は参加者の顔ぶれによってカラーが変わったほうがいいかなと思っていて。
動くのが苦手な人たちみたいだなー?と思ったら、その方向性で進めていく。
そうするとその人たちだけのダンスが生まれ、より“人格が滲み出るようなダンス”
になると思います。



●未来さんがそんな広いスタンスで迎えてくれると、どんな子でも参加しやすい
ですね。見ていても自然と子どもたちの動きが広がっていく感じがします。
子ども向けのワークならではの楽しさはありますか?


大人はだいぶ思考が固まってしまっていますね。体は固まっていても動かせば
ほぐれるけど、ダンスは想像力が大事。
イメージや言葉を使って、想像力・表現力を広げながら、ダンサーの背景が
見えてくることが魅力です。そう考えると子どもの想像力や表現力は本当にすごい。
何もないところから自分の世界をどんどん作っていく。
私も子どもが2人いて、上の子どもが3歳になりますが、ただのブロックの塊が、
彼の中では恐竜だったり、飛行機だったりする。本当にすごいなー!って、
いつも感心しています。
そんな想像力をどう引き出していくかは日々学ばされますね。
子どもの想像力を潰さないで、大事にすること。それは子どもたちの個性を
どう受け入れるかを大事にすることかな?と。
声が小さくても、上手に意見が言えないような子でも、運動が苦手な子でも、
それが個性なんだから、そのままを受け入れ、耳を傾けたいですね。
正解はないと思っています。



●小学校低学年の参加者も多いですが、保護者立ち合いNGに驚きました。
子どもたちだけにしている理由は?


子どもって親の知らないところでどんどん成長していると思うんです。
旅をさせることも大事だと思う。
親は自分の子どものことを“知りたい生き物”だから、見たい気持ちも
分かりますが、子どもの世界を広げるワークなので、子どもたちだけに
したいと思っています。
また子どもたちもお父さん・お母さんがいると甘えちゃうんですよね。
でも、いなかったらいないで過ごせるんです。
“親がいない”っていう階段を登って見える世界を見てほしいんです。



●各地でダンスワークを行われる際に地域柄を意識されるそうですが、
“塩釜らしさ”を感じることはありますか?


一昨年のワーク(2015年開催「自分のカラダのスピードを変えて、遊んでみる」)で
“塩釜の自慢できるところは?”と聞いたら、いーっぱい出てきたんです。
それって、できそうでできないことだと思います。
その年はその自慢を“塩釜ダンス”にしたんですけど、
それが本当にすばらしかった。それって本当にすごいことだと思いますね。
あとはみんな人懐っこい。知らない大人にもすぐに仲良くしてくれる。
とても温かく受け入れてくれるので、私も自分が出しやすい。
距離を縮めやすくて、一緒にダンスしやすいですね。

あと、この杉村惇美術館もとてもすてきな場所です。
高く真っ白な天井、でも窓の外をみると日常が広がっている。
でも、子ども達はその日常を超えて自分の世界を広げていってくれるんです。
異次元に行きやすい、とてもいい場所だと思います。



●最後になりますが、未来さん的「塩釜らしく 21世紀らしく わたしたちらしく」の
将来像を教えてください。


私は指示を出す“先生”という立場ではいたくないなーと思っていて。
それは、みんなの意見を出し合って、みんなで作っていくということを
大事にしていきたいからなんです。
私はそれを磨いていって…、そうすると新しい発見が出きて…、
それをまたみんなで磨いて…というワークショップにしたいですね。


(インタビュー・テキスト・編集:澤里友紀)

2015年芸術銀河共催ワークショップ
自分のカラダのスピードを変えて、遊んでみる

2016年度定期講座「塩釜らしく 21世紀らしく わたしたちらしく」
前期
後期
2017年2月5日公開ワークショップ