ことばで紡ぐ 土井波音展「汽水の幽霊」 渋谷七奈展「光源の二輪」
投稿日:2024.10.20

若手アーティスト支援プログラムVoyage2024 土井波音展「汽水の幽霊」、渋谷七奈展「光源の二輪」をご覧いただいた方々から、展覧会や作品についてお寄せいただいたコメントをご紹介いたします。
さまざまな視点から自由に紡がれることばの数々が、鑑賞者の視野を広げ、本展のイメージが豊かに広がっていくことを願っています。
(敬称略)
千葉真利(Cyg art gallery キュレーター)
佐藤千穂(アートファン)
展覧会概要
土井波音展「汽水の幽霊」
渋谷七奈展「光源の二輪」
2024年10月20日更新
千葉真利(Cyg art gallery キュレーター)
自然光あふれる空間に集う渋谷の絵と、渋谷によって選び出された詩や短歌。空間全体が光というものを讃えていた。「光源の二輪」という展覧会タイトルは、個人的な記憶から連想したもののようだ。必死に自転車を漕ぎ、車輪が回る情景が思い浮かぶ。2022年にCyg art galleryで開催した個展「きゅうに光があばれだして」もだが、渋谷は極めて個人的な体験をもとに普遍性のある題材を掘り下げていく。今回の特徴的なしつらえとして、言葉が展示されていたことがあげられる。短歌が台にのっていたり、壁に詩が「展示」されていたりする。読まれることを待つだけではない、その姿に感嘆する。それらは絵と言葉の関係性に思考をめぐらせることを促す。そういえば、渋谷の絵も短歌のように限られた要素で構成されるが、余白は想像をどこまでも広げ、残された線は力強く響く。渋谷は生と死への思い、そして思い出を、光や植物の姿を用いながら絵画のなかに記していく。死を包み込み生を浮かび上がらせるような光に満ちた空間は、とても優しい。わたしは、この空間に立ち会えたことが嬉しい。
佐藤 千穂(アートファン)
土井波音展「汽水の幽霊」
土井さんと源融の幻想への想いが、音をとおして身体に染み込んでくるような展示でした。
彼女が創り出す世界は、時間や空間を超えて様々なことを想起させ、それらは私自身の記憶や感情とも繋がり、自分の存在を受け入れてもらえたような不思議な安堵感を覚えました。
帰路の電車内でも、普段は気づかない音に気づけたり、いつも目にしている光景がかけがえのないものに思えたり。出会えたことに感謝したくなる作品でした。
渋谷七奈展「光源の二輪」
渋谷さんの展示は、絵や言葉など様々な要素が散りばめられつつ、それら全てがひとつの光に包まれているような、切なくもとても愛おしい空間でした。
天候や時間帯により色々な表情を見せてくれるドローイングや絵画作品は、鑑賞のたび、私の心にもそっと寄り添ってくれているようでした。
彼女が生み出す作品たちに、また出会いたいと思います。