若手アーティスト支援プログラムVoyage2023 釣舟富紀子展 ROADSTEAD

投稿日:2023.07.28

企画展
《5類書架》

 

若手アーティスト支援プログラムVoyage2023

釣舟富紀子展「ROADSTEAD」

 

 本プログラム9回目を数える今回は、公募により選考された画家の釣舟富紀子と、現代美術作家の折田千秋をご紹介いたします。
釣舟は自身が幼少より慣れ親しむ塩竈や周辺地域の風景を題材に絵画を描いています。情緒あふれる懐かしい風景や現代社会に空想も織り交ぜて描かれたシリーズでは、一見ポップな描写でありながら密やかに潜在的なまちの姿を提示し、日常風景の深層に迫ります。一方、実存する古い建造物や風景を写実的に記録したシリーズは、東日本大震災以降、刻々と移ろう風景を描き残したいという思いを強くし、歴史や風土、自然界の細部を緻密にとらえ、風景に潜む気配をも描き出しています。作品の隅々まで目を凝らし、探検するように様々な発見をしながら、鑑賞者それぞれが“地域”に対するイメージを自由に広げていく機会になれば幸いです。

 

2023年7月15日[土]ー9月3日[日]

月曜休館(7/17[月祝]は開館、翌日休館)
 
塩竈市杉村惇美術館 企画展示室1
開館時間:10時~17時(入館受付は16時30分まで)
観覧料/企画展+常設展セット(団体割引料金/20名以上):
一般500円(400円) 大学生・高校生400円(320円)
中学生以下・メンバーシップ会員無料

※各種障がい者手帳を提示された方は割引。
 

主催:塩竈市杉村惇美術館  共催:塩竈市

助成:公益財団法人カメイ社会教育振興財団(仙台市)

後援:河北新報社 朝日新聞仙台総局 毎日新聞仙台支局 読売新聞東北総局
     tbc東北放送 仙台放送 ミヤギテレビ KHB東日本放送 エフエム仙台
     BAYWAVE78.1FM ケーブルテレビマリネット 仙台リビング新聞社

 
若手アーティスト支援プログラム「Voyage」は、これからの活躍が期待される若手アーティストの可能性に光をあて、新たなステップを提供することを目的に、展覧会を中心としてトークやワークショップなど多様な表現の機会を設ける事業です。これまで、多くの人々にとって新たな才能や感性と出会える場となるよう毎年度ごとに異なる作家と共に取り組んできました。展示制作にかかる費用の一部のほか、企画や広報などに関する支援を通して、地域にゆかりのある若手アーティストの意欲的な表現活動をサポートし、発表の場を提供します。今年度の特別審査員は、石倉敏明氏(人類学者・秋田公立美術大学大学院准教授)、小田原のどか氏(彫刻家・評論家・出版社代表)、鹿野護氏(デザイナー・東北芸術工科大学教授)です。 
 
問合せ:塩竈市杉村惇美術館
〒985-0052 宮城県塩竈市本町8番1号
TEL 022-362-2555/FAX 022-794-8873

 


 

関連企画

ギャラリートーク 釣舟富紀子・折田千秋

2023/7/15[土]14時〜 企画展示室(60分程度)
作品解説等、作家によるギャラリートーク。
※要展示観覧料。要予約(定員15名)
申込みはこちらから

 


 

ネオ塩竈まち歩き

2023/8/12[土]14時〜 美術館集合(120分程度)
参加費(保険料込):一般500円、メンバーシップ・中学生以下300円 節足動物などの生き物の視点で、作品に描かれている場所を訪れるまち歩き。展示も観覧いただけます。
※要予約(定員15名)
申込みはこちらから

詳細ページ

 


 

《祓ヶ崎稲荷神社から見た本塩釜駅》2021年 (和紙、水干絵の具、岩絵の具)

 

 

《暗渠》2020年(アクリル絵の具)

 

 

釣舟富紀子(つりふね ふきこ/Fukiko Tsurifune)
画家。1993年宮城県塩竈市出身・在住。京都精華大学マンガ学部マンガ学科卒業。幼少から親しんだ塩竈市内外の風景・建造物などをモチーフに、ファンタジー描写を加えた架空の地方都市のアクリル画群を制作している。また、日本画材では実在の古い建造物を中心にした絵を描く。2020年「第35回東北建築フォーラム 第14回東北の建築を描く展」大賞、2022年「第59回宮城県芸術祭絵画展(公募の部)」宮城県芸術協会賞受賞。

 


 

■特別審査員による講評 ※五十音順、敬称略

釣舟はこれまで、伝統的な画材・技法で実在する塩竈の景観を描いた「日本画」による作品群と、今はない風景やこれから失われてしまうかもしれない風景をアクリル絵具で描いた「ローカルアーバンファンタジー風」の作品群を制作してきました。前者は画家と鑑賞者の視点が重なり合うリアルな手法で、後者は2.5次元的な少女のキャラクターを俯瞰または接写する超現実的な手法で丁寧に描き分けられています。いずれも塩竈という同じ街を舞台としつつ、異なる視点・媒体・技法・作風で描き分けられた「実在/超実在の塩竈」には、建築物や景観、街の風物、人びとの記憶への深い愛が感じられます。塩竈の街を幼少期から生き、見つめてきた作家が、親しんだ生活の場としての街を多元的な視点でとらえなおす構想は非常に興味深く、その成果となる展示が楽しみです。
石倉敏明(人類学者・秋田公立美術大学大学院准教授)

塩竈を主題に描かれた釣舟の過去作は、驚くほどの完成度を持っていた。緻密な描写は単なる写実画ではなく、日常と想像の異界とが複雑に重なり合っている。様々な発見に満ちた絵を描く技量は、その絵を見た誰しもが認めるところであるだろう。それだけに、完成した作品を並べることに終始したこれまでの展示が惜しいと感じられた。何を描くのか、どのように描くのかとともに、それをいかに見せるのかに向き合うことは、釣舟にとって重要な経験となるのではないか。若手作家の模索のよき伴奏者となってきた塩竈市杉村惇美術館での展示が、必ずやターニングポイントになるだろうと考え、評価した。
今回の審査はとても悩ましいものであった。選出された2名のほかにも、最後まで議論の対象となった力ある作家がいたことを付言しておきたい。
小田原のどか(彫刻家・評論家・出版社代表)

塩釜在住だからこそ見える景色、何年も暮らしているからこそ獲得できる視点。私自身は隣町に住み、母の実家があったこともあり、塩釜には馴染みがある。しかし作者が描く塩釜は、私の知っている街とは同じようで全くの別世界である。現実に空想が染み込んだかのような新しい景色が広がっているのである。しかし、彼女の作品の最大の特徴は、視点ではないかと思う。小さく、静かで、浮遊しているかのような視点。何かに似ている。あえていうなら昆虫の視点のような、ふわりと街に迷い込んだ蝶から見たような世界。この世界を見ていると、香りから記憶が蘇るように、不思議な郷愁が生まれてくる。今回のVoyage展で、ぜひとも多くの地元の方に見てほしい。そして願わくばもっと大型の作品も見てみたい。蝶になって大きなネオ塩釜を体感してみたいのである。
鹿野護(デザイナー・東北芸術工科大学教授)



若手アーティスト支援プログラムVoyage2023 折田千秋展「コレクティブ·イメージ」