若手アーティスト支援プログラムVoyage 工藤玲那 個展「アンパブリック マザー アンド チャイルド」

投稿日:2022.06.04

企画展
工藤玲那「無題」

 

若手アーティスト支援プログラムVoyage2022

工藤玲那 個展「アンパブリック マザー アンド チャイルド」

 

本プログラム8回目を数える今回は、公募により選考された映画監督・美術家・文筆家の鈴木史と、ビジュアルアーティストの工藤玲那をご紹介いたします。
工藤は絵画や陶芸をはじめ、あらゆる表現媒体を介した作品を制作し、各地に滞在しながら活動しています。各地での出会いや個人的な記憶、経験などをもとに柔軟な好奇心から生まれる作品は、自己と他者、ものごとの隙間に生じる言いようのない混沌を探り、固定化された意識や概念を根底から解きほぐそうとする試 みとも言えます。
本展では塩竈に伝わる「母子石」*を題材に、作家自身の母との共同制作を行います。工藤の母・リャンさんは中国出身であり、現在は移動販売を行うなど、料理を生業としてきました。日本人にも馴染む味へと変化していったリャンさんの料理には、文化の違いを超えた味のグラデーションがあったといいます。工藤が最もリャンさんのルーツを感じる「料理」を題材と した共同制作を通じて、家族、ルーツとは何か、普遍的なテーマについて問い直します。

*「母子石(ははこいし)」の物語について
多賀城の政庁創建時、人柱を立てて永久の護りにするため、とある家族の父が人柱に選ばれました。母と娘は傍にあった石の上でいつまでも悲しみに暮れ、二人の立っていたその石に足跡が残されました。この物語は「母子石」の物語として今に伝わり、塩竈と多賀城を結ぶ道でこの石を見ることができます。

 

2022年7月16日[土]ー9月4日[日]

月曜休館
 
塩竈市杉村惇美術館 企画展示室
開館時間:10時~17時(入館受付は16時30分まで)
観覧料/企画展+常設展セット(団体割引料金/20名以上):
一般500円(400円) 大学生・高校生400円(320円)
中学生以下・メンバーシップ会員無料

※各種障がい者手帳を提示された方は割引。
 

主催:塩竈市杉村惇美術館  共催:塩竈市
助成:公益財団法人カメイ社会教育振興財団(仙台市)
後援:河北新報社 朝日新聞仙台総局 毎日新聞仙台支局 読売新聞東北総局
TBC東北放送 仙台放送 ミヤギテレビ KHB東日本放送 エフエム仙台
   BAYWAVE78.1FM ケーブルテレビマリネット 仙台リビング新聞社
 
若手アーティスト支援プログラム「Voyage」とは、これからの活躍が期待される若手アーティストの可能性に光をあて、新たなステップを提供することを目的に、展覧会を中心としてトークやワークショップなど多様な表現の機会を設ける事業です。これまで、多くの人々にとって新たな才能や感性と出会える場となるよう毎年度ごとに異なる作家と共に取り組んできました。展示制作にかかる費用の一部のほか、企画や広報などに関する支援を通して、地元にゆかりのある若手アーティストの意欲的な表現活動をサポートし、発表の場を提供します。
今年度の特別審査員は、石倉敏明氏(人類学者・秋田公立美術大学大学院准教授)、小田原のどか氏(彫刻家・評論家・出版社代表)、三瀬夏之介氏(日本画家・東北芸術工科大学教授)です。
 
 
問合せ:塩竈市杉村惇美術館
〒985-0052 宮城県塩竈市本町8番1号
TEL 022-362-2555/FAX 022-794-8873

本企画は手指の消毒や換気、三密を避けるなど、新型コロナウイルス感染拡大防止対策をして行います。また、ご来館の方にはマスクの着用をお願いしています。今後の状況次第ではオンラインでの実施など、内容が変更になる場合があります。変更がある場合は当館ホームページ、SNS等でお知らせいたします。
 


関連企画

ギャラリートーク 鈴木史・工藤玲那

2022年7月16日[土]10時30分 企画展示室
作品解説等、作家によるギャラリートーク。
※要展示観覧料。要予約(定員15名)
申込みはこちらから


リャンさんは行ったり来たり。
来来去去


 

「touchable murmur」GALVANIZE Gallery, 宮城(2018)

 
工藤玲那(くどう れな/Rena Kudoh)
ビジュアルアーティスト。1994年宮城県出身。2017年東北芸術工科大学芸術学部美術科洋画コース卒業。様々な土地を転々としているうちに混ざりあうアノニマスな記憶、捨てきれない幼い頃の自分、唐突な夢…、個人的な混沌をベースに、絵画や陶芸、ドローイングなどの表現で、見たことがあるようで見たことがない世界をつくり出している。現在は拠点を持たず、アジアを中心に各地に滞在、横断しながら制作している。 https://www.renakudoh.xyz/

 
【主な個展】
2017年「anima」(POST Gallery 4GATS/東京)
2018年「touchable murmur」(GALVANIZE Gallery/宮城)
2021年「Metamórphōsis Bon Voyage」(LKIF gallery/韓国)
2022年「一人で寂しく 二人包含 三人集まって はい切り身」(VOU/棒/京都)

【主なグループ展】
2017年「山形藝術界隈展〇四」(鶴岡アートフォーラム/山形)
2018年「floater」(BOTA coffee/山形)
2019年「Reborn-Art Festival 2019」(宮城)
2019年「모험! 더블 크로스 Adventure! Double Cross」(PACK:/韓国)
2020-2021年「CONTACT」(Clayarch Gimhae Museum/韓国)
 
 
■特別審査員による講評 ※五十音順、敬称略

工藤は中国上海出身で日本に渡り、料理店を営んできた母との共同制作を構想します。国境を渡って宮城という土地で生活し、現在は移動販売車で焼き鳥を販売しているという母との共同作業。意外な伏線は、母と子の悲しくも美しい伝説を秘めた塩竈の史跡「母子石」への参照です。実は母子石は、塩竈市だけでなく、中国など東アジア全域に広がる普遍性を持つことから、神話学的な興奮を覚えました。母子神話を秘めた「母子石」のリサーチから陶の立体作品を制作し、さらに母に料理を作ってもらい盛り付ける過程を映像作品として展示するという魅力的な重層性。不動の史跡や陶作品に対して、映像や移動販売車を持ってくるという発想も新鮮です。国境や民族を超え、国籍と料理、制作と生活を和解させて、食べること、つくること、生きることの実践へと向かう姿勢。そこから生まれる成果は、鑑賞者に大きな刺激を与えてくれるでしょう。
石倉敏明(人類学者・秋田公立美術大学大学院准教授)

工藤の応募プランは、塩竈市杉村惇美術館のギャラリー空間の特性を生かした、地に足の着いた内容であった。これまで培ったものを作品展示として見せるという堅実な提案に加えて、じつに魅力的であったのが、パフォーマンスのプランである。ここでの工藤の提案は、他国にルーツを持つ母親との共同作業を通じ、来場者に「振る舞い」を行うというもの。参照されたのは、塩竈市に伝わる「母子石」伝説だ。総じて工藤のプランは、過去を陳列する閉じた箱としての美術館を、自らとその家族を含めた様々な人の交差点として読みかえ、見通しの立たない「これから」を他者とともに分かち合おうとする提案であると私は理解した。作家自身の新たな展開が期待できると同時に、塩竈の人々の交流の場としても機能する杉村惇美術館の可能性をよりいっそう引き出せるのではないかと捉え、評価した。
小田原のどか(彫刻家・評論家・出版社代表)

塩竈と多賀城をむすぶ坂の登り口にある、壮絶な家族の物語を宿した「母子石」のリサーチをベースにしながら自身のルーツを問う意欲的なプランだ。工藤自身が遭遇した家族の大きな変化をきっかけに、大陸にまでつながる壮大な視点と、母と子という最小単位の関係性が複雑に絡み合う展覧会場がすぐに想像できた。また、器物と食という人間の生において普遍的なモチーフを扱うことによって、錯綜したルーツによってチャンポン化した私たちの帰属意識を問うような批評精神も同時に感じた。結果的に母と子の共同制作とならざるを得ないこのプランを通して何が出てくるのか?早くその空間が見たい。
三瀬夏之介(日本画家・東北芸術工科大学教授)



鈴木史 個展「Miss. Arkadin」